事業実績 在来生態系の保全復元活動 ナガエツルノゲイトウ関連 オオバナミズキンバイ・ナガエツルノゲイトウの繁茂状況確認調査(2020年冬)報告

オオバナミズキンバイ・ナガエツルノゲイトウの繁茂状況確認調査(2020 年冬)報告 2020/1

日時 2020年1月10日(金) 午前10時00分集合、10時30分~12時30分
場所  手賀沼 我孫子手賀沼漁協桟橋→上沼→下沼・我孫子高校グラウンド地先→ハス群落→漁協桟橋
参加者 滋賀県:中井克樹さん、千葉県立中央博物館:林紀男さん、県水質保全課:原紳一郎班長、
    美手連:4 名(竹内、半沢、梶、小倉)、「手賀沼の小池」船頭さん(社長)
報告 小倉久子 (亀成川を愛する会))
※この見学は手賀沼流域フォーラム調査事業の一環です。

オオバナミズキンバイ・ナガエツルノゲイトウの繁茂状況確認調査(2020 年冬)報告

* 2019 年は、7 月の調査の後、9 月~10 月に台風15 号、19 号、21 号の影響の低気圧が千葉県に大きな被害をもたらしました。幸い、手賀沼はこれらに直撃されることはありませんでしたが、大きな影響を受けました。

* そこで、2020 年春季のナガエツルノゲイトウ(以下、ナガエ)・オオバナミズキンバイ(以下、オオバナ)の繁茂期前の状況を確認するため、手賀沼の湖岸の目視調査を行いました。

* 3 回の台風及び低気圧では、手賀沼周辺では内水洪水も含めて、洪水・浸水被害はありませんでしたが、台風15 号(9 月9 日0時~24 時:112.0mm)、台風19 号(10 月10 日~13 日:150.0mm)、10 月25 日の大雨(25 日0時~24 時:193.0mm)という大雨が降りました(いずれも我孫子地域気象観測所の値)。風は特に台風15 号の時に東の風が強く、19 号とその後の大雨の風向きは主に南~南西系でした。

* その結果、沼の北岸には、1 月10 日の時点でもまだ、台風等で打ち寄せられたナガエ・オオバナの枯草がゴミと一緒に打ち上げられていました。一方、南岸では、群落に引っかかっていたものは、ほとんど見当たりませんでした。

* 今回の船上からの目視調査では確認することはできませんでしたが、まだオオバナミズキンバイの大規模群落が確認されていない下沼でも、昨秋の台風等の際に上沼から流されてきた、ちぎれた小さな片々がヨシ群落等の間に入り込み、これから大増殖を始める危険性が高いという指摘が中井さん、林さんからありました。夏季の大増殖の前に、発芽したナガエ・オオバナをていねいに摘み取る必要があります。

* 通常であれば、ナガエもオオバナも水上部分はほとんど枯れて、水中でのみ越冬しているのですが、今年は暖冬のためか、陸生のナガエ・オオバナは枯れていても、水上に張り出しているものはまだ枯れずに成長を続けていました。特に、オオバナの元気なことに驚かされました。



【確認調査地点】

【調査結果】

上記の地図の番号の地点の写真を示します。
直近の調査である2019 年7 月8 日の写真と比較してみました。

① 手賀大橋の西側北岸

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

枯草の濃い赤茶色はオオバナ、ちょっと薄い茶色はナガエです。奥(陸域)の薄茶色はヨシでオオバナが上陸して、だんだんヨシ帯を侵略している様子が、はっきりわかります。この場所はナガエよりもオオバナ(濃い茶色)が優勢でした。

②第5樋管

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

③ 第5樋管の西側

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

写真右:水際線に近いやや薄い茶色部分はナガエが優勢。水面に伸びているのもナガエの芽。奥の
ほうのヨシ帯と接している濃い色がオオバナ。

④ 若松植生帯

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑤ 水路

<2019 年7 月8 日>

1 月でもオオバナは、まだ緑色を多く保っています。コブハクチョウがオオバナを食いちぎっているようです。中井さんから、この部分は当面は、ここが供給源とならないようにフェンス等で封じ込めておくと良い、というアドバイスをいただきました。


<2020 年1 月10 日>

⑥ 第4樋管

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑦第3樋管

<2020 年1 月10 日>

⑧ 第2樋管

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑨ 第1樋管

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑩ 第1樋管の手賀沼公園側

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

ここは、予想よりも枯草の堆積量が少なかった地点です。他の地点からの流れ藻が見当たらなかった
だけでなく、ここに繁茂していたナガエ・オオバナが、流失していました。


⑪ 我孫子新田

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

この場所は、流れ藻がたくさん集積していました。岸のボートにも、流れ着いた(ナガエ・)オオ
バナが覆いかぶさっていました。


⑫ 根戸新田

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

7 月の写真ではわかりませんが、1 月の写真では、オオバナの繁茂域が明瞭にわかります。この辺り
もオオバナが優勢になっています。


水際の灰色っぽいものは、おそらく他の場所から漂着して打ち上げられたナガエ・オオバナでしょう。その陸側の濃い茶色のオオバナは、この場所で枯れたものだと思われます。


⑬ 根戸新田

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑭ 北柏ふるさと公園地先

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑮ 沼南側の花火台船

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

オオバナが優勢ですが、薄茶色のナガエもしっかりポジションを確保しています。


⑯ 北千葉第二機場前

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

以前の広大な『ナガエ・オオバナ大陸』は、残っていた部分も流失して、ますます群落が小さく
なったようです。でも、一度衰退したヨシ帯は、復活しそうにありません。


⑰ 手賀大橋の下流部(南岸)

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

⑱ 下沼 手賀川

<2020 年1 月10 日の調査のみ>

台風19 号直後に中央博物館の林さんが調査なさった時には、この堤防付近にたくさんのナガエ・
オオバナが漂着していたそうですが、その後に(台風19 号、低気圧の大雨で)すっかり流されて
しまっていました。手賀川を通って利根川に流出してしまった可能性があります。


⑲ ハス帯

<2019 年7 月8 日>

<2020 年1 月10 日>

2019 年は、ハスの成育が非常に悪かったため、枯れ枝も少なく、ハス群落の中にあったナガエ・
オオバナの群落は、すべて流されてしまったようでした。枯れた茎が残っていたヒメガマ群落の
間にあったナガエ・オオバナ群落が、かろうじて残っていました。ナガエ・オオバナは、これを
基地として、春になったら「進軍」を始めることでしょう。